映画「My Foolish Heart」|はらいそ通信
2020.11.10
コラム
COLUMN

[bogo]
謎の死を遂げたチェット・ベイカー
名前を知らなくとも彼の歌う「マイファニーバレンタイン」を聴けば、
ああ、この人ねと認識できる人も多いであろう
トランペッターでありジャズシンガーのチェット・ベイカー。
アムステルダムで謎の転落死を遂げた
晩年のチェット・ベイカーを描いた作品「My foolish heart」。
「My foolish heart」はビル・エヴァンスの名曲でも知られている。
奇しくも4か月差で生まれた孤高のジャズメン2人。
どこまでも刹那な旋律を放つ共通した一面をもつ。
その刹那な旋律がたまらなく好きなんだが、
破滅的な人生でしか奏でられない音色を放つ
ジャズメンの背後にある闇は計り知れない。
酒、暴力、薬物、死と壮絶な経験を経なければ奏でられない。
それらを美化することは無論むつかしい。
でも、間違いなく彼らの出す音は、そこを切り離すわけにはいかない。
彼らが向き合い、愛したもの、溺れたもの、逃げ続けたもの、恐れたもの、失ったもの全てが
彼らの音に昇華されていくのは事実。
そんな1人のジャズメンの最期を見ながら、
寝る前にエヴァンスを聴き、
気怠さをもてあましながら寝起きにチェット・ベイカーを聴く。
余韻に浸りながら朝食の支度をして、
食卓につくと、
起きて来た息子のご機嫌なDJで
続いて髭男。
どんどん私が愛おしむ刹那な音が波の向こうに消されていく。
息子は腰を振りながら皿洗い。